環境に配慮した高効率給湯器「エコジョーズ」を国内で初めて発売したパーパス。給湯器メーカーとして、この製品のさらなる販路拡大を目指したのが、新築分譲マンション市場開拓プロジェクトだ。当時、首都圏の大規模な分譲マンションにいけるパーパスのシェアはほぼゼロ。会社を、製品を知ってもらい、選ばれるには何をどうすればいいのか。プロジェクト立ち上げからチームを率いた、パーパスマーケティングジャパン株式会社 東京オフィスの陶山将英に話を聞いた。

新築分譲マンションという、新たな市場への船出

2000年9月、パーパスは日本で初めて、家庭用給湯暖房機として高効率給湯器「エコジョーズ」を発売した。以来、未来を見つめ、環境に配慮した商品は地道に、そして確実に人々の暮らしの中に受け入れられつつあった。
さらなる展開が示されたのは、今から約4年前のことだ。照準を新築分譲マンション市場に定める方針が、会社のプランとして掲げられた。新築分譲マンションでの採用を増やすことで、製品の大量生産、一括納品が可能になり、計画生産による生産の効率化も図られることから、「エコジョーズ」のさらなる市場拡大の為には外せない方向だった。
さらに、給湯器の寿命である10年後を見据えたとき「もともとついていたメーカーの商品に交換しよう」というケースが多いことも、一つの大きな理由だ。今までなかった市場を開拓したい。それがトップを含めた会社全体の思いだった。
首都圏の新築分譲マンションの90%以上を、あるガス事業会社が販売するガス温水システムが占めている。この中にどうやって入り込むか。それがこのプロジェクトのキーだった。

「シェアほぼゼロ」からのスタート

プロジェクトの担当になったのは、首都圏支社の陶山将英だ。もっとも大きな問題は、すでに他メーカーが圧倒的なシェアを持っていたことだった。
「そこに参入するにはどんなものを訴求したらいいのか。お客様が求めていること、ガス事業会社が求めていること、あらゆる情報を日々の営業活動の中で収集しました」
当然、パーパスとしては、競争力のある商品を持ちたい。候補に挙がったのがパーパスの独自の「高温水分配方式」だ。「パーパスが持つコアな技術。そのよさを生かし、他メーカーとの差別化を図った商品を作ろう」。全社からプロジェクトに関わる社員が集められた。
「毎月1回、プロジェクト会議を開きました。15、16~20人ぐらいでしょうか。営業だけではなく開発をする人、原価を弾く人、ハードやソフトの設計、製造の効率化を図る人、アフターサービスを考える人、物流システムを計画する人など、各部門がタッグを組みました」(陶山)
分譲マンションの市場に見合った商品を作る。それには、機能や性能はもちろん、施工性やマンション設置のためのさまざまな制約をすり合わせ、それに見合った部品などもすべてラインナップしなければならない。

パーパスを知ってほしい。工場見学で伝えた思い

ガス事業会社の新築分譲マンション市場にパーパスのシェアは「ほぼゼロ」。その出発点に立ってもっとも力を入れたのは「パーパスを知ってもらう」ことだった。「シェアがないということは、知らないということ。ガス事業会社の担当者やマンションのデベロッパーが抱いていた『実績があまりないようだが、大丈夫なのか』という不安をいかに払拭するかという点に腐心しました」と陶山は振り返る。
ガス事業会社を始めとする関係者への説明会を繰り返し開催。2013年に完成・稼働を始めたばかりの新富士宮工場「エコベストファーム」への見学会も実施した。
「単なる工場見学ではなく、当社の品質に対する取り組み、万が一不具合が発生した場合のトレーサビリティーの体制、製品の性能などを実際に体感いただきました」
特に、パーパス独自の「高温水分配方式」の特長である、『季節や水温にかかわらず設定温度通りのお湯を確実に供給できること』や、『約2秒という速さで設定温度のお湯を供給できる立ち上がりの速さ』などを実機を使用して体験してもらった。
給湯器は、住宅を構成する部品の中のほんの1つでしかない、しかし日々の必需品でもある。暮らしに密着した製品の、品質の高さ、安心安全を守るための真摯な姿勢を、工場見学によって伝える。そのことが「これなら大丈夫だろう」という信頼に結びついた。

選ばれ続けるメーカーを目指し、プロジェクトは続く

この一大プロジェクトは、多くの社員の心を動かした。「私も分からない部分がたくさんあったが、担当部署の社員が全面的に協力してくれた」と陶山。マンション物件の採用が決まり、実績として現れ始めたのは、プロジェクト開始から約2年後。
「採用が増えるにつれて、信頼度が上がってきている。パーパスってけっこうすごいんだね、大手メーカーと比較しても遜色ないと評価していただけるようになってきたことが、何よりもうれしい」と陶山は言う。
ユーザーの声をすい上げ、製品をさらにブラッシュアップし、これからも選ばれ続けること。本当に会社のよさ、商品のよさを理解してもらい、パーパスと付き合っていこうと思っていただけることがメーカーとしての目標だと、陶山は考える。マンションにおける採用件数は今も着実に件数を伸ばし、さらなるシェア拡大を目指す。プロジェクトはまだ、発展の過程にあるのだ。

陶山 将英SUYAMA MASAHIDE

パーパスマーケティングジャパン株式会社
(パーパス株式会社より出向)
営業本部 住設営業グループ 東京オフィス